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第1巻第1号 (2009)

縦縞、横縞パターンが視覚誘発電位に及ぼす影響ー空間的方位と大きさの効果

伊藤元雄

アブストラクト

図形の空間的方位や大きさが一過性パターン出現視覚誘発電位(VEP)に及ぼす効果を検討する試みの一環として,黒輪郭線の縦縞,横縞パターンが注視点の下方0.5°の位置に上端が来るように配置され(下方視野),両眼視で提示された.両図形につき,大きさが(1)縦 3 cm×横 3 cm(a,b)(1倍),(2)6×3(c,d)(2倍),(3)3×6(e,f)(2倍),(4)6×6(g,h)(4倍)の8刺激(Figure 1)が提示された.9名の実験参加者を対象に,VEPが後頭隆起部(I),それより上方5,10,15 cm (I5,I10,I15 cm)から基準導出された.図形条件とブランク(対照)条件との総平均差波形が記録された. 特に部位I5でネガティブ波(N1)とポジティブ波(P2)が取得された.各々の平均頂点潜時は135 ms, 240 ms でった.反復測度2要因ANOVA(線分方位2×パターン方位/大きさ4)が部位I5の振幅と潜時に対して実施された.N1 振幅に関して,線分方位の主効果,交互作用は有意ではなく,大きさ/パターン方位の主効果のみが有意であり,多重比較の結果,(2)>(1),(4)>(1)が有意であった.大きさには有意差が見られたが,パターン方位には有意差は見られなかった,P2振幅に関するANOVAの結果では,線分方位の主効果,交互作用は有意ではなく,大きさ/パターン方位のみが有意であった.多重比較の結果では,(2),(4)>(1);(2)>(3), (4);(4)>(3)が有意であった.この条件では,大きさの他に,パターン方位にも有意差が見られ,縦縞パターンは横縞パターンよりも有意に大きかった. N1,P2潜時に関するANOVAの結果では,線分方位の主効果,大きさ/パターン方位の主効果,交互作用ともに有意ではなかった.パターン方位に関して,N1振幅では有意差は見られず,P2振幅で明瞭な差異が見られたが,この結果は恐らく実験参加者の個人差に依るものであろう.

キーワードパターン出現視覚誘発電位、下方視野、縦縞・横縞パターン、空間的方位、大きさ

インプラントと天然歯を支台とした上顎コーヌス義歯症例

豊田哲郎・村上弘・伊藤正樹・吉成伸夫・服部正巳

アブストラクト

歯を喪失した場合,その後に起こるロ腔環境の変化により,咀嚼能力や嚥下能力の低下,構音障害
などの機能的障害や審美障害が継発する.そのため,ロ腔諸機能の回復,外観の修復を図るため,喪
失した歯とその周囲組織を人工的装置に置き換える歯科補綴処置が必要となる.
また近年,歯科インプラント治療の信頼性が飛躍的に向上し,機能的にも審美的にも充分満足のい
く結果が得られるようになった.しかしながら,インプラントと天然歯の連結は,両者の披圧変位量
が異なるためその設計は極めて困難で,推奨はされていない.
今回我々は,嘔吐反射が強く通常の有床義歯での歯科補綴処置が困難であった症例に対し,インプ
ラントと残存天然歯が混在する上顎コーヌス義歯を適用し,約6年間良好に経過したのでその概要を
報告した.

キーワードdental implant, gaggling renex,Konus denture,oral function,prosthetic treatment, plate denture

日本の結核対策

玉川達雄・青石惠子・森山恭子・宇野智子・小出龍郎

アブストラクト

結核はわが国において,明治から大正,昭和の戦後しばらくまで猛威をふるっていたが,その後急激に減少してきた.ところが1999年には結核緊急事態宣言が厚生大臣から発せられ,全国の学校や保健機関に大きな衝撃を与えた.一時的に結核の罹患率がわずかに増えたが,その後も減り続けている.一体,日本の結核対策に何か起こっているのであろうか.学生の結核患者が発生した際の保健所と大学の保健センターとの協議を例示して検討する.

キーワードtuberculosis(TB), the JAPAN strategy, contact investigations, TB contro1, 1atent TB infection (LTBI),Skin testing with tuberculin-PPD(TST),QuantiFERON

健常女子大学生のおける米飯の食後血糖に及ぼす食物繊維、酢、油、大豆製品、牛乳・乳製品の影響

末田香里・奥田みゆき・山田真紀子

アブストラクト

米飯(糖質50g)を基準食として,副食を同時摂取して,副食の食後血糖上昇抑制効果を検討した.被験者は女子学生6名(22歳)で,耐糖能異常がないことを条件とした.副食として食物繊維,肌油脂,大豆製品,乳製品を日常にもちいる量を用いた.空腹時と検査食(米飯 + 副食)の摂取後2時間まで経時的に,自己血糖測定器を用いて,被験者自身が測定した.得られた血糖値より血糖曲線下面積(AUC : Area under the Curve)を算出し,基準食AUCを100として検査食の血糖AUC%を算出した.その結果,0米飯 + 食物繊維・米飯 + 酢製品・米飯 + パターのAUCは,基準食のAUCと差はなかった,2)大豆製品のうち,米飯 + 豆腐200gは,基準食と比較して,AUC%は54土24と有意に低下した.豆腐100gに比較して豆腐200gでは増量効果が認められた.3)乳製品では米飯 + 普通牛乳200m1,米飯 + スライスチーズ36gのAUC%はそれぞれ74土14,68土30と小さかった.4)米飯 + スライスチーズ36g + 豆腐100gを組み合わせたAUC%は62土28と低下が認められた.しかしチーズと豆腐の相乗効果はなかった.以上,脂肪とたんぱく質を多く合む豆腐200gや,普通牛乳とチーズを米飯と摂取すると,血糖上昇が抑制された.このことから,AUC%を低下させるには検査食中にある一定量の脂肪およびタンパク質の存在が必要であると推察された.

キーワードpostprandial glucose,glycaemic index, rice,milk, soy bean, butter, diabetes

高校生に対する健康教育の継続的な実践に関わるプロセスの検討

下村淳子

アブストラクト

高等学校の学校祭で実施した11回の健康教育を分析したところ,「食生活・肥満予防」と「飲酒・喫煙・身だしなみ予防」に関わる目的に大別できた.どちらの目的仏最初は身近な情報提供から始めた内容が次第に高度な体験を伴う実践に変化し,その過程で新たな課題に気づき,次の実践につなげていた.このことから,継続的な実践に至った要因は「養護教諭の職務である健康相談活動や保健室で捉えた学校保骨置報を生かしたテーマ設定を行ったこと」と「保健委員や他職種の専門家などとの連携を図ったこと」「実践やその後の評価によって新たな健康課題や取り組むべき目標をみつけたこと」であることを捉えることができた.

キーワード高校生,健康教育,養護教諭

小学生におけるいじめ(2)

酒井亮爾

アブストラクト

「いじめ」は、どの社会でもどの世代にも昔からみられたが,2006年には小・中学校でいじめを苦にした自殺が相次いで起こり,再度,いじめが社会問題としてセンセーショナルに取り上げられた(酒井,2007).ここでは,小学校の高学年(4年生~6年生)を対象にいじめに問する質問紙調査を実施した.質問紙の項目は,8項目からなっているが,ここでは,いじめの加害経験に関する項目について評定尺度で求めた結果について報告した.調査対象は愛知県内の3つの小学校の4,5,6年生児童303名(男子153名,女子150名)であった.その結果,いじめ経験は61.4%で,男子(73.2%)の方が女子(49.3%)よりも多かった.学年別では,4年生から6年生へとどの学年でも加害経験は60%程度であった.いじめ加害者の「いじめている」という認識といじめ被害者の「いじめを受けている」という意識には違いがみられた.いじめ加害の様態については,「悪口やいやなことをいわれた」がもっとも多く,次に「イ中間はずれ」など,精神的な苦痛をともなうものであり,さらに「たたく」や「持ち物をかくす」など直接的な行勤となっていた.
いじめ加害者の気持ちとして,もっとも多い反応が「あとでいやな気分になった」や「かわいそうだと思った」であり,加害児童に良心やいじめた相手に対する後悔や罪の感情が起こっていることを示していた.
いじめた後に「気持ちがスカツとした」,「いい気味だと思った」という感情は,男子に多く,また高学年に高い比率でみられたし,「おもしろかった」というストレスの発散やフラストレーションの解消としてもいじめがなされていた.しかし,いじめを肯定する気持ちは低く,いじめてよかったと考える児童は少ないことがわかった.
いじめ行為の理由づけとしては,「前にいじめられたことがあり,その仕返しとしていじめた」という回答がもっとも多く,また,いじめ加害者は「いつか仕返しをされるのではないか」とこわがっていた.このことは,かなり多くのいじめ加害者が,以前はいじめの被害者であったことを示している.いじめ加害者のいじめたときの気持ちや理由づけからは,いじめ加害者もいじめながらも悩み苦しんでいることがわかる.親や教師がいじめ加害者の心の葛藤や悩み,フラストレーションなどを十分に聞いてやり,その心に寄り添いその辛さをわかってやることがいじめ防止につながるであろう.

キーワードいじめ加害者,いじめの理由づけ,小学生,小学校

愛知県における糖尿病患者の足外観異常と糖尿病神経障害の実態調査成績ー愛知県糖尿病対策推進会議ー

佐藤祐造・志賀捷浩・小栗貴美子・牧靖典・万歳登茂子・堀田にぎし・川村孝彦・中村二郎・大澤功・角田博信・丸山晋二

アブストラクト

愛知県内117施設の医療機関に御協力頂き,足チェックシートによる糖尿病患者実態調査を行った.平成19年4月から12月までに集積された7,477例のデーターを集計した.患者が訴える足の症状としては「足がつる・あるいはこむら返りが起こる」の頻度が高く,足の外観異常では「みずむしなど足に感染症がある」の頻度が高かった.足の症状は罹病期間が長い,血糖コントロールが悪い患者でその頻度はより高い傾向が認められた.また足の症状個数とアキレス腱反射の異常率には正の相関が認められた.足チェックシートなどを利用して足の症状や外観を診ることは,糖尿病の治療や糖尿病神経障害の早期発見を行っていく上で重要であると思われた.また,日々の外来診療の中で「足」を診るためには,看護師や糖尿病療養指導士等とのチーム医療による連携を推進していくことが重要であると考えられた.

キーワードdiabetes,diabetic neulopathy, survey,Achilles tendon renex (ATFR)

臨床研究結果からみた健康教育の効果(第1報)ー糖尿病領域における健康教育の有用性ー

大澤功

アブストラクト

目的糖尿病領域における健康教育の効果を,発表された臨床研究結果を用いて評価する.
方法2000年1月から2008年12月までに発表された糖尿病領域における教育効果を検討しているmeta-analysis(systematic review)論文を,検索収集して評価を実施した.
結果13論文が本研究の目的に適していた.その中で12論文が糖尿病患者への自己管理教育を評価していた.これらは患者教育によって血糖コントロールやQOLが改善されることを示していた.しかし,5論文においては血糖値の改善効果は小さかった.また,長期的な効果については十分に検討されていなかった.2型糖尿病のリスクが高い集団に実施した生活習慣指導によって,その発症が有意に低下したことを示していた論文もあった.
結論糖尿病領域において健康教育は糖尿病状態やQOLに良い効果をもたらすようだが,今後も効果だけでなく経済的評価という効率性をも合めて検討する必要かある.

キーワードdiabetes mellitus, health education, meta-analysis, systematic review, clinical epidemiology


Perceptual Similarity between Pictures Modulates ERPs during a Stop/NoStop Task

Aki Akamine and Mitsuro Kida.

アブストラクト

Similarities between stimuli affect performance on Teaction time (RT)tasks.This study examined whether similarities betweenPictures modulate stimulus-elicitedevent-related brain Potentials (ERPs)during a StoP/NoStop task in which participants had to withhold motor responses. The StoP/NOStop task is a relatively novel method of assessing discriminative RTs,in which participants are asked to withhold a motor response to a Particular stimulus (Stoo trials),but to respond to all other stimuli (NoStop trials).Stimulus similarity was manipulated by varying the perceptual similarity between the Stop stimuli and the NoStop stimuli. ERPs for Stop stimuli were recorded during both low- and high-similarity conditions. These new data were analyzed along with data previously collected during a medium-similarity experiment (Akamine & Kida, 2006). The Stop stimuli elicited a large centra1-Parietal dominant positivexvave(late P3),with a peak latency of about 400-550 ms. Late P3 1ateney significantly increased as a function of stimulus similarity, but amplitude did not change. This component closely resembles the NOGO P3, which is related to response inhibition. Difficulties in discriminating between the stimuli would cause a delay in the inhibition of responses to the Stop stimuli. In addition,RTs for NoStoP stimuli increased as a function of stimulus similarity. These results suggest that the stimulus processing that is required if a motor response is to be withheld might have a reciprocal relationship with response execution in a discriminative RT task.

キーワードevent-related bTain potentials,P2,N2,P3,StoP/NoStop task, response inhibition

文字色と背景色の組み合わせに対する視認性の分析ー大規模データ収集の一時報告ー

佐部利真吾

アブストラクト

最尤非対称多次元尺度構成法を用いた先行研究によって,文字色と背景色の組み合わせに対する視認性の対称部は,その大部分が次元ごとに伸縮されたYUV色空間上の布置に基づき,またその歪対称部については比較的小さいことが示されている.ただし,これらの知見は基本的な8色に対するデータに基づいており,より多くの色数に対するデータの検討が必要である.そこで本研究では,大規模データ収集の一時報告として,先行研究とは異なる6色間の部分的な組み合わせに対するデータを収集し,最尤対称多次元尺度構成法により分析して,その結果を先行研究の知見の点から検討した.

キーワードcolor scheme, color space, maximum likelihood multidimensional scaling, visibility

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