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研究成果報告(研究助成)

平成29年度研究助成

運動神経の軸索再生おけるMAPリン酸化カスケードの役割
伊藤高行・伊藤あき・祖父江 元

背景と目的
 神経系の機能はネットワークとしての物理的構築に依存し、その主要構成成分が神経細胞の軸索である。外傷などの物理的障害あるいは疾患に起因する病的過程により軸索が障害されることで、ネットワークが分断され様々な機能障害が生じる。軸索障害に起因する機能障害の回復過程において、軸索障害後に神経細胞が細胞死を免れ、さらに軸索再生することがネットワークの再構築に不可欠である。我々は、MAP(Mitogen Activated Protein)キナーゼのリン酸化カスケードの最上流にあるキナーゼの一つであるZPK (DLK ないしMAP3K12とも呼ばれる)が哺乳類の第一次感覚神経細胞の軸索再生促進に寄与していることを初めて報告したが1)、一方でZPK 遺伝子を不活化したマウスでは、運動神経細胞が発生段階でのプログラム細胞死に不応となり、さらに新生児期での軸索切断後の神経細胞死からも免れることも見いだした2,3)。すなわち、軸索障害などのストレスによってZPK からリン酸化カスケードとしてMAP キナーゼ経路を伝達される障害シグナルは、運動神経細胞の細胞死を促進する一方で軸索再生をも促進するという相反する反応を惹起することを示している。障害後の神経機能回復を助けるという治療的観点からは障害後の細胞死は抑制し、軸索再生は促進させることが望ましいが、まずは反応の相反性に関わるメカニズムを理解することが必要と考えた。したがって、本研究ではZPK の基質として知られるMAP キナーゼ経路の2 つのMAP キナーゼキナーゼ、MKK4(MAP2K4) とMKK7(MAP2K7) について軸索再生における役割の違いがあるという仮説を検証する。

平成29年度研究助成

心拍変動増大に最適な呼吸は圧反射感度を高めるか?(第2報)
榊原雅人・金田宗久・石田光男

研究目的・背景
 緩徐なペース呼吸とバイオフィードバックの手続きを用いて心拍変動(heart rate variability: HRV)を増大させる方法をHRV バイオフィードバック(HRV biofeedback: HRVBF)とよぶ(Lehrer, 2007)。これまでストレスに関わるさまざまな症状にHRVBF が適用され、抑うつ、不安の軽減、不眠などの改善に有用であることが知られている。HRVBF の効果の機序のひとつとして、この手続きが圧受容体反射(baroreflex: BR)を刺激しホメオスタシス機能を高める可能性のあることが指摘されている。
 HRVBF ではこのような効果を高めるために、最適なペースで呼吸をコントロールすることが重視されている。ここで最適なペースを共鳴周波数とよび、身長や性別による個人差があることから、HRVBF 訓練では個人の共鳴周波数を特定する手続きが採られている。そこでは1 分あたり6 回(cpm)のペース呼吸を実施してHRV の出現度合いを判断し、順次、6.5、5.5、5、4.5回のペースについて評価し、HRV が最大となるペースを個人の共鳴周波数として特定する。
 共鳴周波数は6.5cpm のように区切りのよいポイントでなく、本来は6.23cpm のように細かな値になり得ることが指摘されていることから、榊原・及川(2017)は個人の共鳴周波数を精度よく同定するために安静時HRV の低周波(low frequency: LF)成分のピーク周波数に着目した。彼らは、安静時LF ピーク周波数をもとにペース呼吸を実施したとき、共鳴周波数をもとにペース呼吸を行ったときよりも大きなHRV が現れることを見出している。先行研究ではHRV の増大を観察したが、一方でBR 感度(baroreflex sensitivity: BRS)が増加するかどうかについては明らかにされていない。本研究は安静時LF 周波数をもとにしてペース呼吸を行ったとき、HRV とともにBRS が効果的に増加するかどうか検討することを目的とした。

平成29年度研究助成

福祉サービス第三者評価における評価者の現状と課題
城戸裕子

はじめに
 福祉サービス第三者評価は、社会福祉法人等の事業者の提供するサービスの質を当事者以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から評価する事業をいい、2001年から開始されている。評価事業全般においては、全国社会福祉協議会の提示するガイドラインに沿って、各都道府県推進協議機関が評価機関の申請認定、評価者の養成を独自で担っている。
 A県では13 の評価機関が存在する。また、A県福祉サービス第三者評価推進センターでは毎年、評価者養成研修を実施し、その育成に努めている。しかしながら、近年の傾向として特定の評価機関への受審、特定の評価者のみが評価実施を担当するという不均衡が生じている。
 このことは、評価結果の偏りと特定の評価者への評価業務の集中となり、評価自体に時間を要し、公表が遅延する事態を招いている。そのため、本来の目的である公正中立な評価の実現に結びついていない現状が推進センター内委員会にて指摘されている。特に評価経験の有無は、評価者のスキルに大きな差異を生じさせており、第三者評価自体の質の向上が期待できないという課題もある。
 そのため本研究では、A県で福祉サービス第三者評価養成研修を修了した評価者に着目し、評価者への悉皆調査により、第三者評価の現状と課題を明らかにすることを目的とした。
 本研究の調査結果から明らかとなった評価調査者の現状と課題より、評価者育成の在り方、養成研修の再構築、評価機関の指導体制の見直しを図る一助とし、公平・中立、専門的かつ客観的な立場からの第三者評価の本来の目的が実現できることにつなげたいと考えた。

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