このページの目次
- 下方・上方視野における幾何学的図形の角度性と空間的方位が視覚誘発電位に及ぼす効果
- Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) ラットにおける大豆タンパク,シナモン,紫蘇油の有用性
- Mild Cognitive Impairment(MCI)におけるQuality of Life(QOL)の特徴について-Alzheimer 型認知症(ATD)との比較検討-
- 女子大学生における米飯の食後血糖上昇に及ぼす大豆製品の血糖上昇抑制効果
- 小学2年生の肥満の実態と生活習慣との関連-学校間較差の観点から-
- ASYMMAXSCALによるエゴグラム・パターン間の相性度データの分析
- 承認欲求,制御焦点と親の社会的勢力の関係-仮説の提示-
伊藤元雄、佐部利真吾
アブストラクト
幾何学的図形の角度性と空間的方位が一過性のパターン出現視覚誘発電位(VEP)に及ぼす効果を検討する試みの一環として,垂直方向の角度を30°,60°,90°,120°,150°と変化させた黒輪郭線の菱形と,菱形と縦:横の比率を一定にして菱形に外接させた楕円が下方視野,上方視野に提示された.10名の実験参加者を対象に,一過性VEP が後頭隆起部(I),その上方5,10,15 cm (I5,I10,I15)から基準導出された.下方視野では陰性電位のN1波(平均頂点潜時約143 ms),上方視野では陽性電位のP波(約136 ms)が取得された.反復測度2要因ANOVA が部位I5の振幅と潜時に対して実施された.総じて,N1波,P波ともに菱形は楕円よりも振幅が大きかった.また,30°,150°条件を除いて,菱形,楕円におけるN1波の振幅は角度性の関数として,ともに類似した勾配で減少した.P波振幅の減少は楕円よりも菱形でより急峻であった.この所見は,LVF では空間的方位の効果のみが出現し,UVF では角度性の効果が空間的方位の効果に重畳していたこと示唆している.
キーワード | 形の知覚、視覚誘発電位、下方・上方視野、角度性、空間的方位 |
---|
小林亮平、大野良文、長崎大、齊藤大蔵、庄秋栄、内藤正和、水藤弘吏、佐藤祐造
アブストラクト
背景:メタボリックシンドローム(MS)の根底にある肥満はインスリン抵抗性を誘発する最も重要な危険因子である.MS を改善させる食品として,大豆,シナモン,また,n‒3系不飽和脂肪酸が豊富な紫蘇油が報告されている.そこで本研究では,Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットを用いて,大豆タンパク,シナモン,紫蘇油を8週間自由摂取させ,大豆タンパク,シナモン,紫蘇油の有用性について検討した.
方法:8週齢の雄性OLETF ラットを無作為に4群に分けた.コントロール群,大豆タンパク群,シナモン群,紫蘇油群とし,8週間自由摂取させ,体重,摂餌量,空腹時血糖値,血清インスリン値,インスリン抵抗性,副睾丸脂肪重量について評価した.インスリン抵抗性の指標はHomeostasis Model Assessment-Insulin Resistance (HOMA-IR)により評価した.
結果:血清インスリン値は,紫蘇油群でコントロール群と大豆タンパク群に比べ増加傾向が認められた(各々P=0.053, P=0.063).その他の評価項目には有意差を認めなかった.
結論:OLETF ラットにおける大豆タンパク,シナモン,紫蘇油の8週間の自由摂取は,大豆タンパク群とシナモン群では,体重,摂餌量,血清インスリン値,インスリン抵抗性に影響を及ぼさなかったが,紫蘇油群で血清インスリン値が増加傾向を示した.以上の結果より,紫蘇油がOLETF ラットのインスリン抵抗性を増悪させる可能性が推察された.
キーワード | Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rat, Soy protein, Cinnamon, Perilla oil, Insulin resistance |
---|
辰巳寛、田中誠也、杉山裕美、早川統子、山本正彦
アブストラクト
目的:MCI のQOL の特徴とその関連要因について検討した.
方法:対象はMCI 群47名と軽度ATD 群45名および中等度ATD 群25名である.患者評価はQOLAD,MMSE,FAB,SDS を,家族介護者に対してはQOL-AD,NPI-Q,HADLS,SDS,J-ZBI を実施した.
結果:QOL-AD の主観的評価・客観的評価ともにMCI 群と軽度ATD 群とでは有意差はなかった.MCI 群と中等度ATD 群との間で,主観的評価の下位1項目で有意差を認めた.MCI 群のQOL-AD の主観的評価が患者SDS と,客観的評価が患者の教育歴やHADLS,患者SDS,家族SDS,J-ZBI-8と有意な相関を認めた.重回帰分析の結果,MCI 患者の主観的評価には患者SDS が,客観的評価にはHADLS と患者SDS が重要な関連要因として抽出された.
結論:MCI の主観的QOL には患者の気分状態が,客観的QOL には患者の気分状態およびADL 機能が強く影響しており,MCI 患者に対しては早期の段階から心理的・社会的アプローチが重要である.
キーワード | 軽度認知障害 (MCI),Quality of Life (QOL),Quality of Life-Alzheimer's disease scale (QOL-AD),抑うつ気分 |
---|
PDFダウンロード
- Mild Cognitive Impairment(MCI)におけるQuality of Life(QOL)の特徴について-Alzheimer 型認知症(ATD)との比較検討-(PDF: 381KB)
末田香里、奥田みゆき
アブストラクト
【目的】
食後高血糖抑制の観点より,大豆製品の種類や摂取量を比較し,どの大豆製品をどの程度摂取すれば血糖上昇を抑制できるのか,さらにその機序について検討した.
【方法】
被験者は健常な本学女子学生10名とした.年齢は21~22歳,体格指数(BMI)は20.2±1.2 (Mean ± SD)であった.基準食はサトウのごはん 150g(サトウ食品:糖質50g 相当)を用いた.検査食は有機豆乳(めいらく:200ml,400ml),納豆(ミツカン:45g,90g),木綿豆腐(サンデイリー:400g),きなこ(横関食糧工業:15g),おから(京都タンパク:50g,150g)を用い,糖質合計50gとなるように,サトウのごはんの量を調節し摂取した.血糖値測定は自己血糖測定器(グルテストNeo スーパー:三和化学研究所)を用い,被験者自身が負荷前,負荷後15,30,45,60,90,120分後の計7回測定し,血糖上昇曲線下面積(Area Under Curve;以下AUC と略)を算出した.
【結果と考察】
- 基準食のAUCmg/dl・120min( 307±129)に対して検査食のAUC は,①有機豆乳200ml 食(234±86),400ml 食(83±80) ②納豆45g 食(251±112),90g 食(232±100) ③木綿豆腐400g 食(133±68) ④きなこ15g 食(255±57) ⑤おから50g 食(295±105),150g 食(192±66)であった.食後血糖上昇抑制効果が認められたのは,有機豆乳400ml 食,木綿豆腐400g 食,おから150g 食であった.
- 食後の血糖上昇抑制効果が認められた有機豆乳400ml 食と木綿豆腐400g 食はたんぱく質・脂質含有量が多く,おから150g 食は不溶性食物繊維含有量が他の検査食より多かった.以上から,食後の血糖上昇を抑制させるには大豆製品中に含まれる一定量の脂質・たんぱく質,または不溶性食物繊維の存在が有効であると推測された.
キーワード | 食後血糖、大豆製品、食物繊維、インスリン、インクレチン、グリセミックインデックス、たんぱく質、脂質 |
---|
酒井映子、大須賀惠子、佐藤祐造
アブストラクト
I県T市における全5小学校2年生の肥満の実態を学校別に明らかにし,生活習慣との関連から児童の肥満対策への取り組みについて検討する.
対象はI県T市における全5小学校の2年生511名の内,調査に同意の得られた494名(男266名,女228名)である.調査内容は平成22年度定期健康診断結果および養護教諭,管理栄養士が平成22年11~12月に実施した集合調査法による自記式生活習慣アンケート調査の53項目である.体型の分析には日比式による肥満度の判定を行い,「やせすぎ」「やせぎみ」「普通」「太りぎみ」「肥満」の5分類とした.分析にはSPSS PASW Statistics 19を用い,体型を従属変数,生活習慣を独立変数とした二項ロジスティク回帰分析などを行った.
対象者全体の体型は,「やせすぎ」0.0%,「やせぎみ」7.1%,「普通」75.1%,「太りぎみ」11.7%,「肥満」6.0%であり,肥満度の最大値73.1%,最小値‒18.9%,平均値2.3%,標準偏差±11.0を示した.30%以上の肥満は15名(3.0%)に認められ,この内男子が10名(66.7%)を占めていた.学校別に肥満出現率をみると,E校では30%以上肥満児が4名(5.8%)であるのに対しB校では2名(1.8%)であるなど,学校間に差異を認めた.肥満(太りぎみを含む)と生活習慣との関連では,「家で本を読む」者は読まない者と比較してオッズ比2.5倍(p=0.002),「好き嫌いが多い」者は多くない者と比較して1.9倍(p=0.010),「食べるとき片方の歯だけで噛む」者は両側で噛む者と比較してオッズ比1.8倍(p=0.014)と出現率が高くなっていた.
肥満と生活習慣との関連では,「好き嫌いが多い」「食べるとき片方の歯だけで噛む」などの好ましくない生活習慣が肥満の発現に関わる一方で,肥満が日常生活活動,食嗜好,咀嚼などの生活習慣に影響を及ぼしていることが示唆された.また,肥満児の出現率や生活習慣には学校間較差が認められたことから学区の特徴を踏まえた肥満予防のための保健指導が必要性であると考えられる.
キーワード | 肥満、生活習慣、小学生、生活活動、食嗜好、咀嚼 |
---|
佐部利真吾
アブストラクト
エゴグラムでは,CP(Critical Parent), NP(Nurturing Parent), A(Adult), FC(Free Child), AC(Adapted Child)の得点に基づいていくつかのパターンが想定されている.本研究ではそれらの各得点が高い5つのタイプを取り上げ,それらに役割が当てはめられた際に,それらの間の相性度がどのように認識されるか調査した.各調査対象者は,これらのタイプの中から無作為に割り当てられた2つの組み合わせについて,それらがいくつかの役割を当てはめられたとき,どれほどうまくいきそうかを6段階評定尺度で評定するよう指示された. 本研究ではそのうち, 夫─ 妻の役割のデータをASYMMAXSCAL(最尤非対称多次元尺度構成法,Saburi & Chino, 2008)により分析した.最適モデルの布置より,AC 優位型は他のどのタイプからもおおよそ同程度の距離にあることが示された.また,歪対称性については,CP 優位型は妻より夫に,NP 優位型は夫より妻に合うと認識されることが示された.
キーワード | ASYMMAXSCAL, egogram pattern |
---|
三ツ村美沙子、高木浩人
アブストラクト
このレビューでわれわれは,賞賛獲得欲求,拒否回避欲求,制御焦点と親の社会的勢力に関わる5つの仮説を提示した.5つの仮説とは以下の通りである.仮説1:賞賛獲得欲求と促進焦点は正の関連を示す,仮説2:拒否回避欲求と抑制焦点は正の関連を示す,仮説3:両親に対する社会的勢力認知は制御焦点と関わる,仮説4:父親に対する社会的勢力認知は促進焦点と関わる,仮説5:母親に対する社会的勢力認知は抑制焦点と関わる.今後の実証研究の含意について議論された.
キーワード | 賞賛獲得欲求、拒否回避欲求、促進焦点、抑制焦点、社会的勢力 |
---|