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第11巻第1号(2019)

An elementary theory of a dynamic weighted digraph(2)

Naohito Chino

This paper is the second part of the revised version of my handout presented elsewhere( Chino, 2018a). We examine the trajectories of(1)one of our nonlinear complex difference equation models which describe changes in a dyadic relation between two objects over time,(2)random walk which was introduced by Pearson(1905), and(3)Brownian motion which was initiated by Brown(1827). We revisit some of the results in Chino(2018b)for these trajectories, first, and notice that some of the qualitative behaviors of our nonlinear dyadic system are reminiscent of random walk and Brownian motion. Then, we examine their mathematical properties further. We conclude that the three types of trajectories generated by different processes are different from each other in some respects.

Key words: complex difference equation, Hilbert space, Chino-Shiraiwa theorem, dynamic weighted digraph, chaos, random walk, Brownian motion.

組織コミットメントと性格特性 ―大学生を対象とした調査―

高木浩人 石田正浩
 
本研究の目的は、大学生の5因子性格特性と彼らの大学への組織コミットメントが、対人的公正と大学生活の充実度を統制した後も関連するか検討することであった。225名の大学生を対象にした調査の結果、対人的公正と大学生活の充実度を統制した後も、大学生の5因子性格特性と大学への組織コミットメントの3要素は有意な関連を示した。今後の研究への含意が議論された。

キーワード:組織コミットメント,ビッグ・ファイブ,性格特性,学部学生,対人的公正

心拍変動増大に最適な呼吸は圧反射感度を高めるか?(第2報) -LF 成分のピーク周波数にもとづいたペース呼吸の効果-

榊原雅人 金田宗久 石田光男

心拍変動(HRV)バイオフィードバックは共鳴周波数をもとにしたペース呼吸を介し て心臓血管系の圧反射機能を刺激する(Lehrer et al, 2003)。HRV の低周波変動(LF)は圧反射機能に関連すると考えられるため(Berntson et al, 1997)、LF のスペクトルピークは共鳴周波数と同様の有用性をもたらすことができるかもしれない。本研究はLF スペクトルピーク周波数で行うペース呼吸が共鳴周波数をもとにしたペースと同様に圧受容体反射感度を増加させるかどうか検討することを目的とした。健康な大学生(N = 12)がこの研究に参加し、心電図、呼吸および連続血圧(BP)データを測定した。すべての参加者は、LF スペクトルピーク周波数で実施するペース呼吸(LF 条件)と共鳴周波数によるペース呼吸(Resonance 条件)を7 日の間で各々をランダムな順に経験した。両日とも5分間のベースライン測定の後、各呼吸条件を5分間実施した。結果として、圧受容体反射感度(ms/mmHg)は両方の条件で有意に増加したが、条件と測定期間(ベースライン・呼吸)との間に有意な交互作用は明らかでなかった。LF 振幅(ms)もペース呼吸によって有意に増加したが、条件と測定期間の交互作用は有意ではなかった。これらの結果は、HRV バイオフィードバック訓練におけるペース呼吸にHRV LF スペクトルピークはガイド周波数として使用できることを示唆している。今後、より大きなサンプルサイズで検討を継続する予定である。

キーワード:圧受容体反射感度、シーケンス法、心拍変動、自律神経活動、バイオフィードバック

失語症治療における応用的PACE の試験的介入研究

木村航 辰巳 寛 山本正彦

失語症治療は,刺激-促通法などに代表される古典的失語症治療が有名であるが,現在もさまざまな治療技法が開発され,臨床研究が展開されている.各種の失語症治療の中で,失語症者のコミュニケーション能力に焦点を当てた治療技法として,Promoting Aphasics’ Communicative Effectiveness(PACE)が有名である.PACE の治療効果は,①実用的情報伝達手段の獲得,②コミュニケーション意欲の活性化,③伝達効率の促進・向上の3 つが示されている.一方で,訓練場面の設定が不自然であることや,コミュニケーション方略の般化が難しいことなどの問題点も指摘されている.今回,われわれは回復期リハビリテーション病棟に入院中の失語症者に対して,刺激法を中心とした古典的失語症治療と,応用的PACE を用いた治療介入を経時的に行い,失語症治療におけるPACE の活用法と課題について検討した.応用的PACE 治療によって,呼称能力の改善,目標語の喚語に対する固執性の軽減,身振りや描画などのコミュニケーション手段の多様化と使用頻度の増加などの全般的コミュニケーション能力の拡大が確認された.しかし,PACE における治療条件,長期的な治療効果,般化を高めるための方法論および言語機能の改善に寄与するメカニズムの解明には,更に検証を重ねていくことが必要である.

キーワード:失語症,治療,応用的PACE,試験的介入

ナトカリ計を用いた食習慣改善の取り組み-女子大生の食生活から-

森 圭子 下休場麻衣 藤田奈摘 杉浦芽維 春原芽衣 中川真由美 丹羽瑞季

日本人の食塩摂取量は減少傾向にあるものの、高血圧の有病率は現在も高い。高血圧は脳卒中のリスクファクターであることから、若年期からの高血圧予防が必要である。高血圧の予防においては、ナトリウムやカリウム単独の改善より、尿中Na/K 比の改善が有効とされている。本研究は、食塩・野菜摂取量がいずれも低値な女子大学生を対象として、数週間にわたる野菜・果物の摂取増および減塩等を組み合わせた食事改善実験を行った。女子大生において、野菜・果物の増量においても果物は増えたが野菜は有意に増えなかったことから、尿中Na/ K比の改善に繋がる食事とは、野菜・果物の増量のうち果物の増量と減塩をともに行うことが効果的であることが示唆された。わが国も野菜や果物を単独で増やす目標設定ではなく、WHO/FAO のファクトシートのように、減塩の他に、野菜・果物を合わせて400 g以上摂取することを勧告するべきと考える。

マウス胎児期におけるエンビジンの発現

市原啓子

エンビジンは、GP70 とも称される細胞表面の1 回膜貫通型糖タンパク質である。エンビジンはマウスの発生中期で発現が高く成体での発現は限定的とされる。エンビジンが肝臓の幹細胞のニッチ分子として機能することやエンビジンの発現が亢進したすい臓がん細胞では細胞増殖や転移にエンビジンが関与することから、細胞間の微小環境の形成に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、エンビジンの生体内での役割については不明な点が多い。筆者は、マウス胎児においてエンビジンの免疫組織染色を行なってきた。発生中期では脳、心臓、肝臓で染色が認められる。それらの臓器でのエンビジンの発現量を比較するため、マウスの10.5日胚の脳、11.5日胚と15.5日胚からそれぞれ脳、心臓、肝臓について、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)で調べた。さらに、同じ時期のエンビジンタンパク質をウェスタンブロット法で発現量を確認することにした。エンビジンは脳と心臓では発生に伴って減少する傾向が認められた。エンビジンは主として66 kDa タンパク質として検出された。肝臓では、66 kDa タンパク質のほかに大きなサイズのスメアなバンドとして検出された。肝臓では脳や心臓とは異なる修飾が付加されていると考えられる。肝臓の発生や胎児期の機能におけるエンビジンの役割について今後の研究が期待される。

キーワード:エンビジン、定量的PCR、ウェスタンブロット、マウス発生

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